プレイングとマネジメントの狭間で

マネジメント専任からプレイングマネージャーになってみて

この記事では、これまで約6年間マネジメント専任でプロダクトの開発から離れていた私が再び開発に戻り、プレイングマネージャーに挑戦した経験について書いていきます。具体的には、なぜプロダクト開発の現場に戻ることを決意したのか、実際にプレイングマネージャーとして働いてみて感じた良かった点や課題、そしてその総評をお伝えします。同じような立場にいる方や、これからプレイングマネージャーを目指す方の参考になれば幸いです。


なぜ改めてプレイング(プロダクトの開発)をやろうと思ったか

先に結論を言うとプレイング(エンジニアリング)もしないと良いマネジメントができない!と思ったのが理由です。
私は2018年頃に当時勤めていた会社でエンジニアリングマネージャーを任せてもらい、そこから現職であるコネヒトに務めるまで、組織やピープルマネジメントが業務の中心となる、いわゆる「広いEM」をずっとやっていました。(広いEMに関してはいっぱい記事があるので分からない方は調べていただけると幸いです)実際の業務としては下記のようなものです。

  • エンジニアとの1on1によるメンタル的なマネジメント
  • エンジニアの目標設定や達成、成長に向けた支援
  • 開発チームの運営や生産性の向上の取り組み
  • 新卒、中途のエンジニア採用
  • 採用活動の改善
  • グループや組織の戦略策定

私は元からEM志望だったのでEMになった当初は自分のやりたかった事に集中できて充実感も達成感も感じていました。しかし、広いEMを続けていく中で次第に以下の様な課題感を感じる場面が増えていきました。

 

開発との関わりが希薄になってマネジメントも表層的になる
開発への関わり方が直接チームと一緒に動いてる時は良いのですが、その時の役割や務めている会社のEMへの期待値によっては開発チームとの距離が離れてしまい、その結果として以下のことが起こり、マネジメントがどんどん表層的になっていったなぁと感じています。

  1. 現場感覚の希薄化
    チームメンバーの普段の業務を直接見る機会が減ってしまうので、フィードバックがとてもしづらくなりました。フィードバックって事実をもとにしないといけないので直接見ていないと説得力に欠けるし、フィードバックをしたい出来事が起こってからの鮮度も大事なので、距離ができたことによってエンジニアに対してGood/Motto両方とも伝えてあげる機会が減りマネジメントにおいても手触り感が減っていきました。

  2. 課題に対しての実感が湧きにくくなった
    エンジニアから「現場でこういった問題がある」という話を聞いて情報としては理解できるのですが、自分がその問題に直面していないので、どれぐらいの問題なのかの温度感に実感が湧きづらく、昔の様に熱量を持って対応できる機会が減っていっていると感じていました。

  3. 技術的な知識や感覚が錆びついていく
    これに関しては仕事以外のところでもキャッチアップをしておけば良かった話だと思うので、自分の努力が足りなかったのもあると思います。言い訳をさせてもらうと平日は仕事が終わると脳が疲れ切っていて勉強をする余力がなかったというのがありました。日本の社会人が世界的に見ても勉強時間が少ないのは、仕事で疲れ切ってしまうのが原因なんじゃないかと考えていますが、今回のブログとは関係がないのでここまでにしておきます。
    EMではなくリードエンジニアなどをしていた時は、開発をしていたのでエンジニアと技術的な話で盛り上がれたり、業務に関しても同じ立場で相談や議論ができたので、自然と距離感も縮まっていました。それに技術的な強み、弱みもフィードドバックしやすかったので手触り感を感じられていましたが、広いEMになってからはこの辺がし辛くなっていきました。

今まで書いたことが起こった結果、マネジメントの仕方が表層的なところに携わるだけになりチームやエンジニアの成長に対して芯を食った対応ができないという悩みが慢性的に続いていました。このままでは同じ悩みが続くだけだ!と思い転職を機に改めてプロダクトの開発にも携わるプレイングマネージャーになることにしました。


実際にやってみて

良かったこと

  1. 技術力の再発見と向上
    プロダクト開発に携わることで改めて開発やエンジニアリングの楽しさに気づけたのと、自分の手でユーザーへ直接価値を届けたり、価値を届ける活動に直接携われる機会が増えたので自己肯定感と仕事へのモチベーションも上がりました。また、新しい技術やトレンドをキャッチアップする良い機会にもなっています。

  2. エンジニアとの距離感や関係性
    一緒にプロダクトの開発や技術的な問題解決に取り組むことで、メンバーとの距離感が縮まり、共通の話題で話せることが増えたと実感しています。
    一緒に仕事する時間が増えたことによってマネジメントにおいても事実をもとにフィードバックできる機会や、すぐにサポートやアドバイスできる機会が増えて手応えを感じやすくなりました。

  3. 問題への実感が感じられ温度感を持って対応できる
    実際に現場で発生する問題を肌で感じることで、実感を持って問題解決に取り組める様になり改善提案もしやすくなりました。

課題に感じたこと

  1. 時間の使い方の難しさ
    当然の話ですがマネジメント業務と開発業務の両立をする必要があるのでタイムマネジメントは今まで以上に必要になりました。特にマネジメントと開発どちら優先すべきか悩む場面があります。

  2. どちらでも成果を出すまでに時間がかかりやすい
    タイムマネジメントの話の続きになりますが、マネジメントとプレイングの両方に携わるので、専任よりもそれぞれに使える時間は減ってしまいます。そのため開発でもマネジメント(特に組織面)でも成果を出すまでに時間が掛かりやすくなったと感じています。ここに関しては周囲に自分の役割や業務を理解してもらって、専任の方よりも時間がかかってしまうことを認識してもらうと、精神的には楽になると思います。


総評

プレイングマネージャーとして働くことは、一筋縄ではいかない挑戦でしたが、間違いなく自身の成長につながる経験だと実感できており、仕事も全体的に楽しめてモチベーションも上がっています。マネジメント専任時代には得られなかった視点や学びがあり、現場感覚を取り戻すことでチームにもポジティブな影響を与えられたと感じています。

一方で、両立の難しさや期待調整といった課題は、今後も工夫が必要な点だと考えています。それでも、プロダクトと向き合い続けることで、自分自身もチームもより強くなり、より良いプロダクトを世の中に届けられると思っています。

この記事を読んでくださった皆さんが、プレイングマネージャーという選択肢を考える際のヒントになれば幸いです。